実際に話を聞いて肌で感じた学校情報 第30回 駒込中学校・高等学校
名門会の担当者が、実際に学校を訪問してみて、肌で感じた生の情報をご紹介!
第30回目の今回は、駒込中学校・高等学校をご紹介します。志望校、併願校を選ぶ際の一つの参考になれば幸いです。
学校名 | 駒込中学校・高等学校 |
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所在地 | 東京都文京区千駄木5-6-25 東京メトロ南北線・本駒込駅 徒歩5分、 東京メトロ千代田線・千駄木駅 徒歩7分 都営地下鉄三田線・白山駅 徒歩7分 都営バス(草63)・駒込千駄木町 下車すぐ |
ホームページ | https://www.komagome.ed.jp/ |
学校沿革
1682(天和2)年、了翁禅師により「勧学講院」が上野不忍池の畔に設立される。
1904(明治37)年、校名を「天台宗中学」と改め、現在の場所に移転する。
1926(大正15)年、「駒込中学校」開校。
■入試情報
◯2019年度中学入試(募集定員・男女120名)
2/1午前・午後、2/2午前・午後、2/4午前の5回入試。
各回、「国際先進コース」と「本科コース」の2本立て。
さらに各回・各コースで受験種類が選択となり、2/1午前・午後と2/2午前は一般入試(2科・4科型、国算英の3科)と適性検査型入試の選択、2/2午後はSTEM入試と自己表現入試の選択となる。2/4は2科のみ。
総出願者数719名、受験者数567名、合格者数452名。入学者125名(4クラス)。
◯2020年度入試
日程には変更なし。
2/2午前の3科(国算英)入試と4科(国算理社)を廃止、2/4の2科を国or算選択の1科目入試とする(予定)。
■進学実績
〈 合格者数 〉
国公立大学27名、早慶上理・ICU 47名、GMARCH 131名など。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学や韓国・延世大学、台湾・国立清華大学など、海外の大学に進学する生徒もあり。
3年前に立ち上げた国際教養コースの第一期生が今春に卒業を迎えた。
■教育の特徴
天台宗・最澄の「一隅を照らす」という言葉を教育理念として掲げ、「次世代を担う若者を育てる」を旗印として人間教育を実践する。
高校に一般コース以外に国際教養コースと理系先進コースを設け、中学ではそのジュニアコースとして国際先進コースを設けている。
仏教思想に基づく教育理念が生徒にもよく浸透して、学校全体が穏やかな空気に囲まれている。
■学校を訪問してみての感想(高等学校改革について)
毎年春に行う入試報告会には、どこよりも多くの塾・教育関係者が集まるように感じる。学校および校長・教職員の長年にわたる教育に対する熱心な姿勢が、さまざまな方面から信頼を得ている証しだろう。
当日の配布物のひとつとして現在の日本の教育環境と自校の方向性についての主張をまとめた冊子があるのだが、情報量も含めて大変興味深い資料となっている。正確なデータ資料をもとにした、是は是、非は非という、世間一般の風評に流されない強い信念が文章化されているものだが、今年の表題は「『高校普通科抜本改革時代』の駒込改革」だった。
いまだに内容が明確にならず、受験生にとって大きな懸念材料となっている教育改革であるが、その中でもいささか出遅れ感のある高校教育について、2021年度から高校普通科を見直すという抜本改革の動きが出てきている。大学入試対策に偏った現在の高校カリキュラムを柔軟に見直し、各校の独自性を高め、生徒がより明確な目的を持って学べるような制度に変えて行こうという主旨のようである。そのために、現在7割以上の生徒が在籍する「普通科」を専門性の高い、たとえば「サイエンス学科」とか「グローバル学科」「チャレンジ学科」などの学科に変えることも視野に入っている。そもそも「普通科」という名称が如何なものか、とも思うが、大学においても以前のような「経済学部」や「法学部」「文学部」ではない新たな学部・学科編成が進行している現状を踏まえれば、そこにつながる基礎段階としての高校カリキュラムの専門性はあってよいのではないかと思う。まして、大学受験勉強に忙殺された生徒たちが、めでたく合格を果たしたのはよいが、入学後の大学の授業に対応できないというような笑うに笑えない事例を、世間のニュースではなく身近なところでも散見するようになっている昨今。その現状を考えると、単に科目名の変更ではなく、抜本的な高校教育の改善は今後の中等・高等教育の健全な発展を考えると必須事項と思われる。このたびの改変が、高校で学ぶ生徒たちにとって実り多いものになることを祈るばかりである。
今年1月に発表され、その後一部教育関係者の間で物議をかもしているテーマでもあるが、これについて「駒込改革基本構想」の中で緊急対応策として述べた箇所がある。
要約すると、まず大学の存在意義と位置づけが時代とともに変わってきており(大学進学率など)、かなり以前から大学はもはや少数の知的エリートの育成機関ではなくなってきている。さらにIT時代・グローバル化という流れの中で大学の種別化が進み、シンガポールなどの海外大学を参考にして、日本国内の大学においても多種多様な改革が生まれてきている。高等学校においては、今後たとえば理数系でオールイングリッシュ授業が常態化されたり、あるいは同一年齢・同一学年・同一授業が終焉したりする可能性も生まれてくる。そうなると、高校の今後の課題は「どこの大学のどのコースと接続するか」ということになり、高校普通科の解体が必然の流れとなる。
その中で、駒込中高はいくつかのコース導入で「5年先んじた改革」を行ってきており、多様性のある学校であり続けると同時に、他校が模範とする教育内容を今後も継続して生き残っていく。
そういった内容である。
このような問題意識と課題解決に向けた能動的動きがこの学校には常にあり、それに裏打ちされた教育改革も同時に、かつ継続的に行われてきている。
それが入学時の偏差値に比べて合格難易度の高い大学への数多くの進学実績につながり、「子供を成長させてくれる学校」という評価に結びついているのだと思う。
先の見通しの難しい時代であるが、今後も強く生き残っていく学校であってほしい。
文責:A.M