「“アジール”としての勉強空間づくりから東大・京大合格へ」 ~2017年 春の講師研修会より指導事例紹介~

カテゴリ : 教育哲学

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高い指導スキルと多くの合格実績を持つ「プロ教師」と呼ばれる講師が名門会には数多く在籍していますが、そんな「プロ教師」の先生方にもさらに研鑽を積んでいただくため、名門会では毎年研修会を開催し、その中で互いの指導例を共有するなどして切磋琢磨し、プロとしてのスキルを飽くことなく向上させ続けています。

今春開催された研修会の中から、最前線でご活躍されている「プロ教師」による他の講師向けの講演の一部を、皆さまに公開します。

プロとしての意識の高さが少しでも伝われば幸いです。

 


 

H29年5月24日 講師研修会・東京
登壇者:山口晋裕先生

ブログ用1

皆さん、おはようございます。
ただいまご紹介いただきました、国語と小論文を担当させていただいております山口晋裕と申します。よろしくお願いいたします。
一番の繁忙期が過ぎてもう三ヶ月くらいとなり、個人的には自由な時間がとれて、前年度の反省とかそういうことを考えているのですが、いろいろ総括してみると、我々からみて受かるだろうという生徒は、やはり受かるべくして受かっています。
しかし同時に、それ以上に受かると思っていた生徒でなかなか第一志望に手が届かなかった生徒も少なくない。やはり僕も皆さんもそうだと思うのですが、そういう生徒達に対して僕らはこれからどうしたらいいのだろう?と考えていかなければならない。番狂わせで勝つという生徒はほぼいませんが、番狂わせで負けたという生徒は結構いますよね。ですから、そうした生徒達にどこをどう指導してあげればよかったのか?なんてことを考えながら、私は現在の授業を行っています。

これから、去年の事例の中で特に印象に残っていた生徒を2名紹介します。
研修会ですので、なにか皆さんの参考にしていただければと思っております。

 

事例1:Nくん(東大文Ⅱ合格)

ブログ用2この子はすごく頭が良い子なんですね。頭の回転が早くて問題を読み取る力もすごく高かったのですが、国語に関しては枝葉末節にこだわり過ぎて「問題の本質はそこじゃないよ」という方向にどんどんとずれて行って、点数がもらえないという子でした。
ですからこの子については、考え方自体はすごく良くできるので、ピントを当てるポイントを直すことをメインとして教えていきました。ピントを合わせるということに関してのごく基礎的な技術的問題に、本人はあまり気づいていない。いま指示語は「それ」と書いてあって「それ」というのは「ここ」を指しているから「ここ」が答えなのだよというと「あぁ、そうなのですね」という、初めて聞いたようなリアクションをする生徒でした。

さらに問題だったのは、実は漢字が全く書けないということでした。センター試験にしても二次試験にしても漢字を読む、書くというのが全く無い学校というのは基本的には無いですから。

入試では、合格範囲上の団子状態になっているところで合否を決めるのが1点ということも非常に多い訳ですよね。例えば東大なんかでは1点の中に100~200人当たり前にいる訳で、配点は低くても、やはり取りこぼすのは致命傷となるということを毎回のように言って、ずっと漢字を書かせる。最初は嫌々やっていたのですが、やはり模試を通して危機感を共有できるようになって、真面目に練習をするようになりました。
最終的に彼の場合は、このような基本を徹底させていったことが、国語に関して合格ラインを越えていった決め手だったのではないかと思います。

 

事例2:Fさん(京大文学部合格)

ブログ用3京大の国語の問題を解いたことのある先生方はご存知かと思いますが、京大は非常に癖のある記述を要求してくる学校で、本文中から答えの根拠というのを見つけてくるというだけではなく、その見つけてきたものを自分の言葉でつないでいって、答えとして仕上げなければならないという(結構珍しいというか、本来国語の問題というのはそういうものなのではないかという気もしますが)、自分の言葉を使って答えを練り上げるということを要求される、流石に頭を使わせる学校だなという問題を出します。
この子は、記述問題でもポイントは外さずに書けるのですが、自分の言葉を使って答えをひねり出すという部分ですごく手こずっていましたので、指導としては問題を見ながら添削をして、「こちらのほうが理想的なのではないか」という答案を書いてみせ、「この部分がポイントである」とか、「こういう言葉を使うと採点者に対してアピールできる」というようなことを繰り返してどんどん修正していきました。

センターが終わってからは一カ月くらいしかありませんけれども、飲み込みも早く、その中で急速にできるようになっていきました。まずはここができなきゃというポイントを1つだけ明示して、そこに意識を集中させてやって行くというやり方が功を奏したであろうと思います。
そういうことができてきて、「点数としては大体これくらいになる」「他の科目ではこのくらいとっていると全体でこうなるから、たぶんセンターの出遅れをひっくり返えせるんじゃない?」という話を授業の中でも良くするようになりました。問題を解くだけではなく、他科目も含めた全体の戦略を考え、その中で、国語で最大限に得点するにはどうしたらいいのかということを意識してもらいながら授業をしていました。

 

“アジール”としての勉強空間づくり

ブログ用4この2人にとって共通して言えることは、基礎・基本的なことを躊躇なく質問できる空気をブースの中で(もしくは自宅指導であったらご家庭の中で)作ってあげる、そういう空間づくりをかなり僕は今回意識しました。
“アジール”という「避難所」という意味の言葉がありますが、“アジール”としての勉強空間というのをちゃんとブースの中に保つこと。「こんなことを聞いたら先生に小馬鹿にされるのではないのかな」という意識を持たせずに、例えば「先生、東大に行きたいのですが、漢字の書き順がわからないのです。これはどういう順番で書けばいいのですか?」というような質問でも、「あぁ、これはね…」と教える。また、「あぁ、これは僕もわからないから、一緒に調べよう」なんて言って調べて一緒に書いてみる、等々。とにかくこんなこともわからないのかというリアクションをしないで、全部質問に淡々と答えるということを心掛けました。

特に高いレベルの学校を狙っている生徒というのは、やはりプライドもあり「こんなことを聞いたらヤバいのでは?」という風に思っている子がすごく多いと思うのです。それは、「そんなことはない。知らぬは一生の恥だよ」というような感じで、ここで聞くのは恥ですらないという雰囲気をちゃんと醸し出して、「何か聞きたいことはあるか」「本当に大丈夫かい?」と尋ね、普通に答えてあげる。
そういうことをしていると、教える側としても気がつかなかった視点を、実は生徒が持っていて、「あぁ、そういうアプローチの仕方もあるね」と2人で切磋琢磨して新しい解を見つけるということも少なからずあったので、やはり生徒の問いというのを虚心坦懐に聞くことで、実はお互いのクオリティをすごく上げられると感じることが昨年はすごく多かったのです。

 

SFC小論対策で感じたこと

ブログ用5

昨年は、SFC、つまり慶應の湘南藤沢キャンパスの小論文の指導もさせていただきました。ご存知の方も多いとは思いますがSFCの小論文はものすごい量の資料を読ませて、30年後の自分が何かを成し遂げて講演をしなさいというような、「何を尋ねているんだ?」という問題が出てくるのですが、これはかなりの想像力を要求されますね。
生徒と一緒に考えて行って、「あぁではない、こうではない」と。小論のルールの中で最大限にクリエイティブなことを書かなければいけないので、こちらもやはり頭をひねらなくてはならないのです。「先生、ここでどん詰まってしまったのだけど…」と言われた時に「こういうことを書いてみてはどうだい?」と提案をいくつも出せないといけない。そこでいくつも案を出すためには、やはり我々も普段からいろいろな社会情勢や時には生徒自身の趣味について知識を深めたりしていかないと、そういう所でアドリブ対応はできません。これから導入される早稲田の問題も、割とSFCの問題に近いので、そういう小論対策を担当される先生というのは、社会情勢はもちろんなのですが、生徒の得意技、生徒がいつも何を見ているか、趣味でどういうことをしているかということを引き当てて、その聞かれていることに対して答えを出すという、そういう必要性を感じました。
生徒に対して我々の方から敷居を下げることが、実は我々自身を鍛えるということにもなるのだと昨年度は実感しました。

 

1人の生徒に対する、チームとしての指導

僕は、一人の生徒を担当している他の科目の先生とも、いろいろフランクに話させていただくことが多くて、例えば世界史の千葉先生とは、「こんな時はどうすればいいの?」「あの子は今こういうことを言っているのでこういう風にやったら良いんじゃない?」というような意見交換をさせていただいていました。
なかなか直接顔を合わせる機会のない先生とは、教務担任を介してこういう話をするなど、一人の生徒のモチベーションアップを、周囲が協力しあってうまくできるのではないかと考えています。名門会は個別指導ではありますが、やはり1人で全てをやっているわけではありません。講師や担任、ご家庭などがチームとして1人の生徒に対していろんなことを分担・協力してやって行くことがより効果的だと思います。

それには、まずは生徒が気楽に話せる場を作るということが、僕らができること、するべきことなのではないのかと思います。

私の方からは以上でございます。ありがとうございました。

 


 

一言で「プロ教師」と言っても、単に教科指導に長けているだけで務まるものではありません。山口先生の講演内容から、真摯に生徒達に向き合う「プロ教師」としての意識の高さが垣間見えたのではないでしょうか。

名門会では、こうした研修会を全国各地で開催しています。多くの合格実績の背景には、このような活動があることを今回ご紹介させていただきました。

 

文責N.N

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