目黒日本大学中学校・高等学校 訪問インタビュー&授業レポート
~井原校長先生にお話しを伺いました~

カテゴリ : 中学受験, 学校情報, 学校説明会報告

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日大の準付属校としての初年度入試で注目を浴びた今春を経て、引き続き受験生の期待を集める「目黒日本大学中学校・高等学校」。この度、同校に訪問する機会をいただき、4月から新たに校長に就任した井原校長先生と、広報部長の天野先生にお話しを伺うことができました。
目黒日本大学中・高の教育方針や進路指導、生徒の様子・今後の学校の課題やテーマなどを伺ったインタビューと、同校の「IP教育(探求プログラム)」授業に参加した際のレポートをご紹介いたします。

学校名 目黒日本大学中学校・高等学校
所在地 東京都目黒区目黒1-6-15
JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線・東急目黒線
目黒駅 徒歩5分
ホームページ https://www.meguro-nichidai.ed.jp/

井原校長先生・広報部長 天野先生にインタビュー

image1[井原 渉(いはら わたる)校長Profile]
日本大学豊山中学校・高等学校教頭を経て、2011年に日出中学校・高等学校(現:目黒日本大学中学校・高等学校)副校長に就任した後、2019年4月より校長職。東京都卓球連盟理事、全国高等学校卓球専門部理事等を歴任。

■学校の指導理念について

―本日は、直接お話しを聞く機会をいただき、ありがとうございます。まずは、学校としての大きな転換期に校長に就任された井原校長にお伺いします。校長としての意気込みをお聞かせください。

井原校長先生(以下略):建学の精神や教育理念は今後とも変えずに行きます。楽しくなければ学校ではないというのが私の理念です。また人格形成という部分については、信頼される人間になろうということを常に生徒に話しています。

―楽しい学校というのは?

井原:ルールや約束事をお互いに守ろうというのが基本です。その上で他人に対する思いやりの気持ちですね。“自分がされて嫌なことは人にはしない”、逆に“してもらってうれしかったことは相手にもしてあげよう”といった人間としての基本的なことが身につけば、それに伴って学力も身についてくると考えています。そうすると、おのずと学校というのは楽しいところになると思うんです。
あとは挨拶ですね。

―なるほど。廊下ですれ違う生徒さんは皆、大きな声で挨拶をしてくれました。

天野広報部長(以下略):毎朝、校長先生が校門に立って生徒たちを迎えているんです。
井原:外部の方には挨拶がしっかりできる学校ですね、と言われるんですが、内部から見るとまだまだかな…という部分はあります。
天野:社会に出てもぶれない、挨拶も含め、自立した“人間性”を身につけた生徒を育てたいと考えてます。

■入試について

―日大の付属校としての中学1期生が入学してきました。人数と男女比を教えてください。

天野:2019年度入試では、119名の合格者を出して78名が入学しました。男子41名、女子37名で2クラス編成です。

―男女の定員は設けていないのでしょうか?

天野:はい、上から成績順に合格を出します。いままでは2:8か3:7くらいで女子が多かったのですが、今年は男子生徒数が、女子生徒数を上回りました。

―生徒の様子はどうですか?

井原:想定以上の生徒が集まってくれたと思います。みんなこの学校が好きで入ってきてくれていることが感じられて、気持ちのよい子たちばかりです。

―想定以上というのは学力面をおっしゃっているのでしょうか?

井原:そうですね。入試終了後にいくつかの塾で拝見したデータでも、首都圏模試で偏差値50以上の生徒が多く受験してくれていて、また入学もしています。

―併願校についても変化がありましたか。

天野:大きく変わりました。青稜中や法政二中など、日出中学校の時の2018年度入試には併願の対象とはならなかったような学校名が何校も聞かれました。また、同じ付属では日吉の日本大学中学を併願した生徒もいました。

―合格のボーダーラインはどうでしたか?

天野:上がりました、はい。

―昨年度の入試の実質倍率は2.4倍と伺っています。

天野:はい。そうですね。

―歩留まり率が高いことも、特徴に挙げられるのではないかと感じました。

天野:初日午前の4科入試の合格者13名が、全員入学手続きをしてくれました。これは初めてのことで、本当に驚きました。
それから、2/1と2/2は受験せず2/4午後だけ受けてくれた生徒もいるのですが、この日は実受験者数101名で合格者が19名、実質倍率5.3倍となり受験生にとっては厳しい入試となってしまいました。かなりレベルが高くなければ合格が取れない状況です。ですから、もし本校への入学をお考えの受験生であれば、まず2/1・2でしっかりと合格を出して、その上で他校へのチャレンジをするという戦略がよいかと思います。

―2020年度入試についてお伺いしたいのですが。変更点などはありますか?

天野:日程としては、2/2午後の入試をなくします。それから、適性検査入試は2/1午前・午後に行っていたのですが、2/1と2/2の午前に変更します。
あとは、2/1午後に行っていた算数1科目入試を、同じ日程で理数入試に変更して、試験時間も50分から70分に変えます。

―そうすると、午前は2/1と2/2の2回でいずれも2科4科と適性検査入試、午後は2/1と2/4の2回で、2/1午後が理数入試、2/4午後が2科入試ということですね。

天野:特待入試の取り決めなどもありますので、詳しくは2020年度入試 募集要項の発表後にそちらで確認していただきたいと思います。

―算数1科目入試を、理数入試に変更された狙いはなんでしょうか?

天野:昨年は2科入試と同じ50分の試験時間で、算数1科目を受けてもらいました。修正すべきという認識は昨年秋から持っていたので、本年度の2020年度入試では我々の想定するものに変えていきたいと思っています。7~8割は算数がベースですが、内容は公式の証明などを題材とした誘導問題や記述問題も出題していきたい。残りの2~3割は理科など他教科を絡めて、全体として算数を中心とした教科横断型の出題にしたいと思っています。試験時間も延ばして70分とします。

―算数1科目入試で入った生徒の、入学後の成績はいかがですか?

天野:たまたま今朝、担任から学力推移調査の結果データを見せてもらったのですが、算数1科目入試で入学してきた生徒もトップ10に入っていました。総合点での評価なので詳細は確認できていませんが、他教科も一定以上の学力があるということが数字からも確認できました。

―募集定員を増やす予定はありますか?

井原:現状は、設備の関係で3クラスにはできないのです。高校の募集人数を減らして、その分を中学にシフトするということも、いまのところは考えていません。
この、70人・2クラス規模を継続させて、少人数ならではの手厚い対応で中身を濃くしていきたいと考えています。

■新中1生の受入れと、将来の進路

―新たな生徒を迎え入れる学校側の対応について教えてください。

井原:在校生との学力面でのギャップは、正直あります。新入生を伸ばして、なおかつ在校生によい刺激を与えるためにはどうすべきか。職員会議でも常に話をしています。中高一貫教育については特に力を入れていきたいと思っています。

―新たに入学してきた生徒たちの学力をいかに伸ばすかですね。

井原:中高一貫生のクラスは6年間このまま持ち上がりになります。高校から入ってくる生徒とはホームルームは混じらない。6年間を2年ごとのタームに分けて、しっかりとした基礎学力を身につけさせると同時に、英語教育や探求学習に特に力を入れていきます。学力的にはいまの特進クラスと同等か、それ以上だと思いますので、しっかりと育てていきます。

―在校生の様子はいかがですか?

井原:1年生はどんな子たちかな…という興味は持っていると思います。ただ、この学校の生徒はもともと男女とも仲がよいんですよ。偏見がないといいますか。通信制課程を含めて多様なコースが共存する環境がよい影響を及ぼしているのかもしれません。「偉いな」と思うのですが、みんな素直で、いじめっ子などがいない。和気あいあいとやっています。

image2

―学力向上という点では、何か手を入れられたのでしょうか。

井原:付属校になったので、日大の基礎学力到達度テストを前提にしたカリキュラムに切り替えました。高校の進学コースは特進クラスとN進学クラスに分かれます。特進クラスは2クラスで国公立大・難関私大・医歯薬系を目指すクラス、N進学クラスは6クラスで日大への進学を前提としたクラスです。

―特進クラスの生徒も基礎学力到達度テストを受けるのですか?

井原:進学先としてはさらに上を目指しますが、日大進学を保障した上で、国公立大や難関私大にチャレンジできるようにしていきます。

―新中1の一貫生も統一テストを受験するということでしょうか?

天野:そこは特進クラスと同様です。他大学進学を前提としたカリキュラムで進めますが、もし日大への進学を希望する生徒が出てきたらそれは認めます。最終決定は高3の10月で間に合いますから。

―日大へは、希望する生徒は進学できそうですか?

天野:昨年、高2生に基礎学力到達度テストを受けさせたのですが、特進クラスでサンプルデータをとったところ、約85%はそのままで進学が可能という結果でした。高校で入学してこの学校で1年間授業を受けてきた生徒たちの結果なので、われわれも自信になりました。

―そうすると、今年入学の中1生は100%日大への推薦資格がとれそうですね。

井原:それを目標として進めていきます。

―付属校になったことによる、生徒の環境変化はいかがでしょうか?

井原:当初は、やはり戸惑いがあったと思います。「付属になったからどうなの?」っていう。しかし、他の付属校のチア部からウェルカムメッセージが届いたり、付属校の中での運動部や文化部の対抗戦があったり、文化祭などでも交流が生まれています。そういった流れの中で、生徒たちの視野も大きく広がってきた感じがします。

天野:進学面でも、今年3月の卒業生は厳密にいうとまだ付属生ではなかったのですが、大学の計らいで付属生としての学部推薦の枠をいただきました。結果、50名が日大に合格し48名が進学しています。本人たちも喜んでいましたが、保護者がとても感激していました。

―そんな先輩の姿を、いまいる生徒たちが見ているのですね。

井原:帰属意識は芽生えますね。先生方の交流もありますから、われわれもよい勉強になります。

―日大への進学を希望する生徒は多いのですか?

天野:中2、中3は特に多いと思います。中2の生徒たちは最後の日出生になるわけですが、「6年後を見据えると、日大に進学できるという選択肢はすごくありがたい」という言葉を多くの生徒から聞いています。

■中高一貫校としての教育内容

―中高一貫生の教育内容について、あらためて聞かせてください。

天野:先ほどもお話をしたように、2クラスはそのまま6年間持ち上がります。
最初の2年間で中学での履修内容は概ね終わらせる予定です。テーマは基礎学力の定着を図る「基礎充実期」です。英語教育についてはオンライン英会話なども進めていきます。探求学習では日本の環境調査を行ったり、日本の伝統文化を掘り下げたりすることをテーマとしています。
中3から高1の2年間は、高校分野の先取りを行って応用力を養成する「実力養成期」としています。中3の3学期に1ヶ月のオーストラリア短期留学を実施し、探求学習では実社会での発見を促すために企業インターンワークを予定しています
最後の2年間は「応用発展期」として、演習型の授業を展開する中で大学合格力を身につけます。CEFR B1レベルの英語力と、希望制ですが海外語学研修も実施します。

別掲「IP教育レポート」を参照

―やはり現在の「教育改革」も意識したものということでしょうか?

井原:対応せざるを得ないところはあります。ただ、学校としての方針や自主性をしっかりと持った上で進めて行きます。

天野:英語資格試験は英検からGTECに変えました。2年前に高校に国際コースを新設して、その生徒がいま高3になっています。3年間の学習成果が来春の大学入試でどのような結果として出てくるか、われわれも期待しています。

■多様なコースの考え方

―中学入試とは別の話になりますが、貴校の特徴として、高校では特進クラス・N進学クラスのほかにスポーツクラス・芸能クラスがありますね。さらに通信制課程もあり、独自性の強い構成と感じています。

井原:偏った見方をする人がいるかもしれませんが、趣旨としては一芸に秀でた人材を育てたいということです。今年、芸能クラスに入学した生徒にも、N進学の基準を上回る成績を持っている生徒が何人もいます。特進への入学を勧めた生徒も何人かいるのですが、「芸能活動をしているので芸能クラスを希望します」ということなのです。
通信制課程も、昔のイメージは捨てたほうがよいですね。都内には100校以上の通信があるんですが、東京都で認可しているのは8校だけです。本校はその中のひとつなのですが、“とにかく高校卒業資格だけは取っておきたい”という生徒ではなく、しっかりとした目標を持っている生徒が多いことも特長です。通信に在籍しながらオリンピックに出る選手もいますし、プロゴルファーもいる。一方で、国立大学に進学する生徒もいます。

―まさに多様性の体現ということですね。

井原:同じフロアに、進学コース、スポーツ・芸能コースの生徒がいて、自分とは違った価値観を持った生徒と日常的に触れ合っている。“こんなにがんばっている友達がいるんだ”ということを目の当たりにして、大いに刺激を受けているように感じます。

天野:お互いに認め合って、お互いに応援しているんです。芸能人扱いとかはしないのです、みんなが友達同士。

井原:よい環境になっています。今後もこの部分はしっかり残していきます。

■受験生へのメッセージ

―最後に、来年受験を迎える生徒・保護者へのメッセージをお願いいたします。

井原:素直で明るい生徒に、ぜひ来て欲しいですね!

天野:ぜひ、学校に足を運んで生徒の様子を見てください。

井原:今日お話したことが、日常でどのように展開されているのか、ご自身の目で、直に学校の様子を見ていただければわかると思います。

―そうですね! 今後のますますの発展を期待しております。本日は長時間にわたり、ありがとうございました。

目黒日本大学 IP教育(探求プログラム)授業レポート

目黒日大で行われている「IP教育」(Inquiry Program=探求プログラム)の授業に参加いたしました。その様子をレポートいたします。

目黒日大のIP教育導入の背景にはAIの進化などによる社会の急激な変化があり、その内容は、将来を生き抜いていくために必要な「疑問力」「探求力」「表現力」という社会適応力を身につけることを目的としたプログラムとなっています。

文科省が主体となって教育改革を進める中で、各中学・高等学校もさまざまなプログラムを実践。共通の考え方として、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングを鍛えることをテーマとしており、論理的思考力と表現力を高め、出された課題についての情報収集や推測・検討・分析を通して問題解決のためのスキルを身につけるといったことになるのですが、その手段と内容はまちまちです。

image3

目黒日大の今年度のIPプログラムは、企業インターンワークと銘打って、大手企業6社とのコラボレーションで進められています。4人ごとにチームを作り、各企業から出されたテーマからひとつを選んで、それぞれがチームごとに協力して課題解決に取り組むという流れ。チーム編成は、フェアにくじ引きで決めていました。
今年課題提供をしてくれている企業は、朝日新聞社、江崎グリコ、大塚製薬、KDDI、明治、森永乳業の6社といずれも一流企業。一例として、朝日新聞社からの指令は『普段ニュースをチェックしているメディア(新聞、テレビ、SNSなど)ベスト3とその理由を聞いてレポートせよ!』という内容でした。
また副題として

  • 事前に朝日新聞社の企業理念やサービスについて調べて参考にしてください。
  • メディアについて調べ、ベスト3と一緒に聞きたいオリジナルの質問も2つ以上考えてください。
  • さまざまな世代50人以上から声を集め、回答者の年齢、性別、職業、住んでいる地域を聞いてください。
  • 集めた声をもとに、わかったことをまとめてレポートしてください。

といった指示も添えられていました。

生徒たちはグループ内で協力し合って、ネットや書籍からの情報収集や学校近辺の駅前などでのインタビュー、あるいは知人を頼ってのネタ集めなど、放課後や休みの日を有効に使って精力的に活動をしてきたようで、「マイクを向けるとほとんどの人が逃げていく」など、実際にやってみてわかる苦労などは共通の経験だったようです。
そのような中で、独自の情報も数多く集まったようす。手間をかけ、時間を費やして得た情報がそれぞれのノートに箇条書きにまとめられていたり、タブレットに保存されたりしています。それをお互いに確認しあい、またそれぞれの見方・考え方を聞きながら情報の取捨選択や要点のまとめなどを行う流れです。
90分にわたって授業に参加させてもらいましたが、その間、自分の考えや主張をやみくもに押し通そうとする生徒は見当たらず、逆に自分の得られなかった情報を他の誰かが持っているのではないかとか、自分とは違った物の見方や新たな発見はないのかといったような、旺盛な知的好奇心を持ってグループワークに取り組んでいる生徒の様子が印象的でした。
エクセルを使ってデータを整理するために、別室に移動してPCを使うグループもあったりしますが、担当の天野先生はファシリテーターとして進行役に徹して、たまに生徒からの質問に答えたりすることはあるものの、あとは生徒の様子を楽しげに見守っていました。90分という時間はあっという間に過ぎて行くという印象です。
7月の定期試験前までで作業は一区切りされるようで、そこまでにレポートの骨格を作り上げるということでした。取材をした時点で、授業としては残り1回のみといった状況で、あとはグループメンバー各自の意識と実行力によって大いに成果が変わってきてしまうことにもなると思うのですが、そこはグループリーダーの腕の見せ所といったところでしょうか…。
夏休みを挟んでレポートに肉付けを行い、9月にクラス内での発表。その後10月の文化祭で対外的な発表の機会を持ち、選ばれたレポートが来年2月の最終発表に進むということでした。
その後、各企業から指令2をもらうことに。昨年の例として、JALからの指令は「10年後の未来、世界で活躍する若者がJALに乗りたくなるような航空会社の新しいサービスを企画提案すること」。このような指令に対するプレゼン発表を行い、学校代表が決まります。そして、そのチームが全国大会へとエントリーすることになるのです。
選択した企業の担当者にもレポートが送られ、それがコメントを添えてフィードバックされる…。遠慮のないコメントも多々見られるとのことでしたが、それが生徒にとっては貴重な学びにつながっていくのでしょう。
各グループの活動が、最終的にどのようなレポートになってできあがってくるのか、大変興味をそそられました。機会があれば、ぜひその成果を拝見したいものです。

文責:A.M

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