実際に話を聞いて肌で感じた学校情報 第36回 洗足学園中学高等学校
名門会の担当者が、実際に学校を訪問してみて、肌で感じた生の情報をご紹介!
第36回目の今回は、洗足学園中学高等学校をご紹介します。志望校、併願校を選ぶ際の一つの参考になれば幸いです。
学校名 | 洗足学園中学高等学校 |
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所在地 | 神奈川県川崎市高津区久本2-3-1 JR南武線 武蔵溝の口駅 徒歩8分 東急田園都市線・大井町線 溝の口駅 徒歩8分 |
ホームページ | https://www.senzoku-gakuen.ed.jp/ |
■学校概要
1930(昭和5)年、財団法人洗足高等女学校設立。
1948(昭和23)年、川崎市久本に洗足学園高等学校を開校、洗足学園幼稚園を開園。
1951(昭和26)年、学校法人洗足学園と改称。
1953(昭和28)年、女子高等学校を1校増設し、目黒区洗足所在を洗足学園第一高等学校・同第一中学校、川崎市溝ノ口所在を同第二高等学校・同第二中学校とする。
1976(昭和51)年、第二高等学校・中学校を洗足学園大学附属高等学校・中学校と改称。
2000(平成12)年、中学・高等学校総合校舎竣工。
2002(平成14)年、洗足学園高等学校・中学校と改称。
■入試情報
◯2019年度中学入試
2018年度入試の難化の影響で、昨年比で応募者数△310名、受験者数△190名と出願者人数は大幅に減少した。特に第3回入試(2/5)の応募者数は、複数回受験割引制度の廃止の影響もあり△161名となったが、逆に当日の出席率は大幅に上昇している。これは前半日程の合否結果を踏まえて第3回入試単独での出願が増えたことも影響していると思われる。
合格辞退者の進学先は、2018年度は豊島岡が最も多かったが、今年はフェリス女学院が31名と最大人数となり、次いで女子学院、豊島岡は12名で3番手となった。桜蔭・雙葉は各5名と例年通り、鷗友学園は3名まで減少した。概ね、併願の様子が見えてくる。横浜雙葉・横浜共立との併願者はほとんどいないようだ。
帰国生入試の辞退者は、大多数が渋谷教育学園渋谷と慶應湘南藤沢に進学している。
来年度入試は、難易度・出題傾向とも2019年度とほぼ同様の出題となる。高難度の入試は継続されるだろう。
〈 入試結果データ 〉
第1回・第2回入試は2教科 or 4教科の選択入試、第3回入試は4教科のみ。
合否判定は、合格者の80%を2科で判定して、残り20%を4科で判定する。したがって、2科の合格者人数は2教科での受験生と4教科での受験生が含まれた数字となる。
第1回 …… 2/1、2科4科・女子80名
応募者数322名(2科34名、4科288名)
受験者数306名(2科32名、4科274名)
合格者数94名(2科判定76名、4科判定18名) ※合格率30.7%
手続者数74名(手続後辞退者1名)
第2回 …… 2/2、2科4科・女子100名
応募者数654名(2科47名、4科607名)
受験者数522名(2科38名、4科484名)
合格者数160名(2科判定129名、4科判定31名) ※合格率30.7%
手続者数53名(手続後辞退者1名)
第3回 …… 2/5、4科・女子40名
応募者数494名
受験者数430名
合格者数80名 ※合格率18.6%
手続者数57名(手続後辞退者2名)
※繰上げ合格者32名
帰国生入試 …… 1/12(A方式・B方式)、女子20名
A方式:英語(60分・100点)+面接(100点)
B方式:英語(50分・100点)+面接(100点)+国語・算数(各50分・各100点)
応募者数計198名、受験者数計188名、合格者数計68名、手続者数62名、入学者38名
入学者合計は、洗足小からの入学者8名を含めて256名。
繰上げ合格については、補欠の発表はなく、国算2科の「良いとこ取り」で判定し、該当者へは電話での連絡となる。
◯2020年度中学入試
日程・募集定員に変更なし。問題の難易度・出題傾向も2019年度入試とほぼ同じ形で出題。
国語の記述問題は、一部の問題で字数制限をなくす。算数の途中式を見る問題は4題出題され、答えが間違っていても途中式が合っていれば加点する形で採点される。
「洗足の入試問題は難問・奇問はなく、努力が結果に結びつく基礎問題が中心で、あきらめずに食らいつけば必ず解ける問題」というのが学校側の見解。
【進学実績】
〈 合格者数 〉
国公立大:東京大7(既卒1)、京都大4(1)、一橋大7、東京工大7など。
私立大:早稲田大94(2)、慶應大87(1)、上智大41(2)、東京理科大37(4)など。
医学部医学科には45名(3)、海外大学に16名が合格。
現役合格率の高さが目に付く。推薦・AOではなく一般受験を前提とした進学指導を行っており、「大学合格も自身のライフデザイン実現のための通過点。生徒の学ぶ意思を尊重するのが基本姿勢」というスタンスを強調する。
【教育の特徴】
教育の柱は「授業」「自治活動」「学外活動」で、“主体的行動で社会に貢献でき、グローバル社会で活躍できる女性を育成する”とする。最近の女子校が掲げる目標の先駆け的存在の学校で、常に社会変化の先を読み、試行錯誤を重ねてきた。
30年ほど前は高等学校が主体の学校で、しかも入試においては公立高校のすべり止め的な位置にあった。そこから学校改革に取り組み始め、10年後には青山学院大学に21名の合格者を出すまでになり、さらに2003年の「総合力の育成宣言」で高2・高3のコース縮小・廃止などを経て、6年間5教科必修カリキュラムの確立に至った。あくまで「授業がベース」という姿勢を貫き、2015年にはそれまでの50分授業を65分授業に改めた。対話型・探求型授業の深化のためには50分では時間が足りないという理由である。学外活動に向けられていた土曜日も、本年度から3時間目までの授業を実施して、大学入試制度改革への対応と同時に、来年度から導入する新カリキュラム(教科横断的学習の時間増)に向けての準備も進める。
社会のグローバル化を見据えたキャリアプログラムにも力を入れ、ネイティブ教員による中1からのコミュニケーション力育成や、各種海外留学・海外語学研修も盛んに行われている。さらに、模擬国連などの学外交流活動の活発さも特筆すべきものがあり、また総合学習の時間を使った各界のエキスパートを招いての教養講座も非常に質の高い内容となっている。
学校は心の豊かさを涵養する場でありたいとの考えに沿って、校舎には数々の美術品や彫刻が置かれ、中高生で構成されるフィルハーモニー管弦楽団には200人を超える部員が集っている。洗足学園音楽大学と合わせて学園内は音楽に満ち、生徒たちは豊かな環境の中で様々なチャレンジに取り組む日々を送っている。
■名門会担当者より一言
偏差値上位の難関校でありながら、午前入試で2科4科選択入試を採用している貴重な学校である。敷居の高さを緩和して受験生受け入れの間口を広げる役割を果たしているように思える。入学後6年間で生徒をしっかりと育てることに自信を持っているのだろう。
失敗を恐れず改革を辞さない教育姿勢は、女子校にあってことさらに輝く印象を受ける。
創始者から受け継ぐキリスト教精神を土台としながら、広く世界の現状やそれぞれが抱える課題に目を向け、さまざまな国・人・価値観などに実際に触れる機会をどこよりも多く提供する、そんな6年間が用意されている。
大学入試に終わらない、これからの時代を生きて行くために必要な真の学力を身につけられる、幅広い女子教育を提供している学校である。
文責:A.M