塾対象の学校説明会から情報をピックアップ 第2回 吉祥女子中学・高等学校
例年行われている塾を対象とした学校説明会も、今年は感染症の影響でその多くが中止となってしまっています。このような困難な状況にも関わらず、オンラインで説明会を開催してくれている学校が何校もあります。その中から、受験生にとって役立ちそうな情報を、名門会の担当者が紹介できる範囲でお伝えしていきます。
今回は、6月初旬に、動画配信による塾対象の説明会があった吉祥女子中学・高等学校をご紹介します。例年の説明会よりも盛りだくさんではないかと思われる内容でした。
学校名 | 吉祥女子中学・高等学校 |
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所在地 | 東京都武蔵野市吉祥寺東町4-12-20 JR中央線・総武線 西荻窪駅徒歩8分 |
ホームページ | https://www.kichijo-joshi.jp/ |
■学校概要
【沿革】
1938(昭和13)年、帝国第一高等女学校として新宿区大久保に創設された。戦災により全校舎が焼失し、1946年に現在地に移転する。翌1947年に現在の校名となる。
1969(昭和44)年、芸術コース(音楽、美術)を設置。
1993(平成5)年、八王子キャンパス(グラウンド、テニスコート、祥成館など)が完成。
2007(平成19)年、高校募集を停止して完全中高一貫教育を開始する。
2018(平成30)年、創立80周年を迎える。
吉祥寺の住所にあるので現学校名なのだが、校名を決める際には宗教的な印象を与えないためにあえて吉祥寺から「寺」の一文字を取った、という話を聞いたように記憶する。昨今はあこがれの街として頻繁に名前の上がる吉祥寺であるが、終戦後の移転当時に現在の姿を思い描くことは難しかったと思われる。
杉並区に隣接するエリアで最寄り駅はJR西荻窪駅となる。生徒は中高分かれた通学路を通って駅から学校に向かう。校舎は赤レンガ作りのお洒落な佇まい。静かな住宅街で、近くには東京女子大学もあり、落ち着いた環境にたっている。
きめ細やかな進路指導には定評があり、全国の国公立大学や難関私大に毎年多くの合格者を出す進学校ではあるが、以前あった芸術コースの匂いもそこかしこにしっかりと残っていて、生徒の進路は多様である。
互いの価値観を尊重し知的探求心を育むという校是が、長い歴史を通して生徒自身により実践されてきた。「そのままの自分でいられる」という感想を持つ生徒が圧倒的に多いのもこの学校の特徴である。
■塾対象 説明会 開催内容(6月実施)
動画配信による説明会の内容は
〇本校の特色と入試について
〇休校期間中の教育活動紹介
〇中学校生活について
〇進路指導とキャリアガイダンス
〇学校紹介ビデオ「吉祥の学びの中で」
〇吉祥祭ドキュメンタリー2019
〇卒業生座談会(1)(2)(3)
という盛りだくさんなものでした。その中から、いくつかピックアップいたします。
■ピックアップ
【休校期間中の教育】
期間中はGoogle Classroomをプラットフォームとした遠隔授業を実施。
3月末に実施方針が決まり、生徒・保護者への連絡。同時に、ただの動画配信ではなく、朝礼やロングホームルームのオンラインでの実施や課題の作成・配布・回収方法の検討、実技科目の実施方法など、可能な限り通常の時間割に近い形で実施する枠組み作りが進められた。あわただしい準備期間を経て4月13日から1日30分×6コマで遠隔授業開始となったが、しかしその間、4月8日に緊急事態宣言が発令されて教職員も一部を除いて在宅勤務を強いられるようになるなど、臨機応変さを求められることとなった。
他の私学もそれぞれに工夫を凝らしてこの間の対応を行っているが、共通するのは「生徒の学びを止めない」という熱い思いである。
その後休校期間が5月末まで延長されることになり、授業内容にも一層の工夫が求められたようだが、もともと全生徒・保護者へのG suiteアカウント配布や高校生の校内スマホ利用許可(利用目的は限定)などICT機器利用の土壌があったことが、授業の円滑な進行に大きく寄与したとのことである。外部模試の自宅での実施なども行われたようだ。
特に新入生である中学1年生への対応にはきめ細かく気を配り、いざ登校ができるようになった際の違和感・抵抗感をなくすために、常に生徒目線に立った先生方の対応の様子は印象的であった。
【吉祥祭】
当初予定されていた9月19日・20日の日程を11月7日・8日に延期する(予定)。
例年、2日間で13,000人ほどの来場者がある盛大な学園祭だが、今年は外部の人たちにはその様子をWebで配信することを考えているようだ。実行委員はいつにも増して大変な準備が必要となるが、他には替えられない一大行事、開催できることを願いたい。
【国際交流】
1年間の留学制度として、帰国後に同級生の学年に復帰する「特認留学」と、帰国後1学年下の学年に所属する「休学留学」がある。いずれも今は全員がいったん帰国しているようだが、そのような状況の中で高1・高2の生徒を中心に、アメリカMiss Porter’s School主催の「オンライン高校生国際会議」に参加して、世界中の女子高校生たちと4週間にわたって意見交換をした生徒もいる。その様子の一部も映像として取り上げられていた。
盛んな国際交流の背景には、中3生のほぼ全員が参加する9日間のカナダ語学体験ツアーなどがあるが、これも今年度の実施は見送られ、1年延期されて高1での実施にするようである。今後は定例的に高1での実施となる可能性もあるとのこと。
夏休み3週間の実施予定だったオーストラリアセミナーも残念ながら中止となり、かわりとしてオーストラリア・クイーンズランド大学のオンライン講義に参加したりもしている。
【進路・ライフスキルプログラム】
「吉祥進学」という進路指導室作成の中身の濃いデータ集がある。吉祥生の進路動向についての詳細な分析データと、大学入試全般の概況や全国の大学ごとの入試動向の分析など、保存をしておくべき内容が満載のものである。
高1の秋に進路選択をして理系・文系・芸術系に分かれるが、進路決定のための材料として、卒業生講演会や各分野の専門家を招いた教養講座、音楽・美術などの課外授業、170講座以上に及ぶ夏期講習などがある。
近年は、理系:文系・芸術系の人数比がほぼ半々になっている。
医学部医学科志望生も多く、2020年度入試では国公立大・私立大合計で76名(現役生42名)が合格を勝ち取っている。
■入試情報
〈 2020年度中学入試結果 〉
過去2年は入学者人数が当初の予想を上回り6クラス予定が7クラス編成となっていたが、2020年度入試では6クラス体制を維持することを念頭に合格者を出した。その結果、第1回入試の合格者は昨年比△27名、第2回入試の合格者は昨年比△24名となった。特に第2回入試では合格者平均が271.9/340点(79.4%)、合格最低点は253/340点(74.4%)と昨年よりも9%アップという、受験生にとっては厳しい入試となった。
ちなみに、2020年度入試の繰上げ合格者はゼロである。
併願校については、第1回入試受験者では豊島岡女子が相変わらず多く、大妻、富士見、晃華学園などが続く。大学付属校では学習院女子が最多となっている。第2回入試受験者になると御三家との併願者が目に付くようになり、特に女子学院との併願者が多いのは例年通りである。鷗友学園との併願者も多い。大学付属校については、学習院女子はここでも多く見られるが、早稲田実業や立教女学院、3日に慶應中等部を受験する生徒も多い。今年は入試日程が3日に移動した青山学院との併願者も20名近くになった。
いずれにしろ、最上位校に位置付けられる難易度で、今後さらに上昇の可能性が高い。
〈 2021年度中学入試 | 変更点 〉
2月4日の第3回入試を廃止して、従来の3回入試から2回入試に変更する。
入試日と募集人数は以下の通り。
第1回 ― 2月1日、134名
第2回 ― 2月2日、100名
・試験科目は2回とも4教科。
国語・算数―各50分・各100点、社会・理科―各35分・各70点。
・合否は4科総合点で判定。
・募集人数は、従来の第3回入試の30名が第1回に20名、第2回に10名上乗せされる。
・合格発表は試験当日の20:30、インターネット発表のみ。
・追加合格は2回とも受験した生徒から出す。
2回入試への移行理由としては、従来の第3回入試は定員が30名と少なく、そこに600人前後の応募者と400~500人の受験者が集まり、受験生にとっては負担の大きいものとなっていた。特に吉祥第一志望という生徒にとっては、かなり合格が見えづらいものだったと思われる。第1回・第2回入試に定員を割り振ることによって、本校第一志望の生徒に多少でも合格の可能性を広げることができればとの思いがあるのだろう。
■その他
9月頃に募集要項の発表が予定されています。
その後、9月~11月までは毎月・月1回の説明会があり、12月13日(日)に入試問題説明会が実施予定です。実際に足を運んで、先輩となる生徒たちの実際の様子を見たり学校の空気を吸ってみたりしてみてはどうだろうか。
時間があれば西荻窪の街の散策もおすすめです。駅周辺を中心に、いろいろな表情を持ったお店が多く、子供を通わせるには安心できるところだと思います。
文責:A.M