塾対象の学校説明会から情報をピックアップ 第5回 武蔵高等学校中学校
2021年度入試の入試報告会がスタートしました。例年同様、塾を対象としたものとして最も早い開催となるのが武蔵中学です。新型コロナ感染症がまだ沈静化していないため、各学校とも当面はオンラインによる実施が中心になりそうですが、その中で書き留めておくべき情報を名門会の担当者が取り上げ、ご報告していきたいと思います。
今後、受験生向けの説明会・入試報告会も多くの学校で予定されています。各科目の出題傾向や出題の意図、採点基準などの有益な情報が多いので、気になる学校については直接参加してみるのがよいでしょう。オンライン説明会は、学校のHPなどから申込みをすると後日視聴のためのURLやパスワードがメールで届くという形式がほとんどです。
では早速、武蔵中学の最新の入試情報をご紹介します。
学校名 | 武蔵高等学校中学校 |
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所在地 | 東京都練馬区豊玉上1-26-1 西武池袋線・江古田駅 徒歩6分 |
ホームページ | https://www.musashi.ed.jp/ |
■入試情報
〈 2021年度 入試概要 〉
募集定員:160名(男子)
入試日:2/1(月)
試験科目:国語(50分・100点)、算数(50分・100点)
社会(40分・60点)、理科(40分・60点)
合格発表:2/3(水)午前9時(合否照会サイトにて発表)
コロナ対策として別室受験の用意をしたり、トイレの混雑を避けるために休憩時間を20分から25分に伸ばしたりもしたが、大きな混乱はなく入試を終えることができた。
合格発表は、例年2/2夕方に行ってきたが、今年度は2/3午前9時に変更した。
〈 2021年度 入試結果 〉HPより
出願者数:584名(昨年比▲17名)
受験者数:574名(昨年比▲6名)
合格者数:183名(昨年比▲5名)
実質倍率:3.1倍
合格者最低点:183/320
合格者平均点:国語69.6/100、算数58.4/100、社会36.3/60、理科37.1/60
受験者平均点:国語61.7/100、算数42.0/100、社会33.4/60、理科32.8/60
出願者数はやや減少したが欠席者が少なく、受験者数はほぼ平年並み。実質倍率も例年と変わらない入試だった。入学辞退者は平年よりも少ないようだ。
受験生の入試成績分布図などもいただいているが、「引用・転載禁止」とあるので詳細については触れないことにする。4科合計の成績分布では160~179点の層がボリュームゾーンで、合格者最低点183点前後とその直下あたりに多くの受験生が集まっていることがわかる。1問の出来・不出来が合否を分けるという現実をデータからも読み取ることができる。
また、HP発表数字にもあるとおり合格者平均と受験者平均の差が最も大きいのは算数である。算数で高得点をとった受験生が合格に大きく近づくことは数字が裏付けているが、一方で合格者の算数の得点内訳を見るとかなり幅広い分布になっていることもわかる。算数で振るわなかった生徒でも他の3教科でそのマイナスを補って合格を手にした生徒が少数ではあってもいるということだ。最後まであきらめないことの大切さを示すデータである。
■2021年度入試問題 出題内容
[ 国語 ]
1約5500字の説明文。
過去2年間は小説文の出題だったが、今年度は「嗅覚」をテーマにした説明文の出題。
設問数は6題で例年通り字数制限のない記述問題だが、今までにはなかった記号選択問題が1題含まれている。
2漢字の読み書き問題が独立問題として出題された。
「難しめの漢字も入れてみたい」という意図で独立した設問になったようだ。
[ 算数 ]
大問4題。
1(1)で、2007年以来の計算問題が出題された。答えは634/2021。
ちょっとした遊びだろう。
2速さの問題。正答率は差がついたようだ。
3平面図形の面積を求める問題。例年四角形の出題が多いが今年は六角形。
武蔵中得意の合同・相似を使って解く問題となっている。
4立方体の展開図、定めたルールに従って考えさせる問題。
[ 社会 ]
いつも通りの大問1題形式。
社会的なものに関心を持ってもらいたいという意図で、今年は日本における新聞の発展をテーマにした出題。江戸時代の瓦版なども取り上げながら明治・大正・昭和・平成を通した発行部数増減の理由や第2次世界大戦中の報道規制、さらにインターネットの普及による新聞の役割の変化などを問う。
1問を除いてすべて記述形式だが、内容的には比較的平易で平均点も出題者の思惑通り昨年よりはアップしたようだ。
[ 理科 ]
大問2題とお土産問題。
1液体温度計(ガラス管の中に液体が入っているもの)を題材にアナログ表示を意識させるものとなっている。
2出題者が街を歩いていて目にした、川の流れと水面を泳ぐカモや星空を取り上げて問題を作成している。観察力と記述力に重点を置いたこの学校らしい出題。
3お土産問題。19本の線が書かれた紙と、それとは太さ・間隔の違う26本の線が書かれた透明シート(OHPシート)が封筒に入っている。その2枚の用紙を回転させたり水平に動かしたりしながら線の重なりや線の間の白い四角形の変化を見させる問題。難しくはないが、どう解答すればよいのかやや戸惑いは感じる。
■その他
2022年度に創立100周年を迎え、「自調自考」の理念のもと新たな100年に向けて歩みを始めている。
長年培ってきた独自のキャリア教育とグローバル教育が、いま改めて評価され、受験生の人気も高まってきている。この学校の卒業生は己の生き方に信念を持ったユニークな人間が多いように感じる。
入試問題も思考力・表現力重視の記述式出題が継続され、時代の変化に対応する柔軟性と変わらぬ理念がよく反映されている。求める生徒像がわかりやすいとも言える。
今後の一層の発展を期待したい。
文責:A.M