実際に話を聞いて肌で感じた学校情報　第１回　海城中学高等学校

名門会教務本部の担当者が、実際に学校を訪問してみて、肌で感じた生の情報をご紹介！
第１回目の今回は、海城中学高等学校をご紹介します。志望校、併願校を選ぶ際の一つの参考になれば幸いです。

■学校概要

• 1891（明治24）年創立の男子校。
  海軍予備校を前身とし、1900（明治33）年に海城学校と改称する。

• 1991年の創立100周年を機に新たな学校改革に取り組み、2011年には高校募集を停止して完全中高一貫校となる。同時に帰国生の募集を始めた。
• 山手線・新大久保駅から徒歩5分。

■入試情報

2/1・2/3の2回入試。
定員は各回145名。
日程が早稲田中と同じで、地域的な要因もあってかなり競合する。

◯2016年度中学入試

昨年（2015年度）入試は早稲田人気も影響して志願者数を減らしたが、今年度入試では2/1が +70名（513名）、2/3が +80名（1230名）と盛り返した。
倍率は2回とも3倍弱。
各科目に合格最低点（足切り点）を設定しているが、4科合計で合格点をとっている生徒であれば特別な例を除いて足切りにはかからないはずである。
複数回受験の優遇措置はない。
1回・2回の難易度は同じになるように問題を作成している。

◯2017年度入試

募集要項に変更なし。

■進学実績

• 今春の卒業生は287名。東大合格者30名（現役20名）。
• 昨年は東大合格者56名だった。今春は高校募集を停止した年に入ってきた一貫生が初めて大学入試を迎え、東大合格者人数の減少はその影響もあったようだ。反省を踏まえて、来春の入試に向けて学校は走り始めている。
• 国公立大学全体では、現役で109名（38％）の生徒が合格している。

■教育の特徴

• 「リベラルでフェアな精神を持った『新しい紳士』の育成」を教育目標に掲げ、新時代のリーダーとなる人材を育てることを理念とする。
• 習熟度別のクラス分けはしない。これは、個人で努力するのではなく多くの級友と切磋琢磨する中で集団として成長して行ってほしいという学校の意思表示である。
• 高2から理系・文系に分かれるが、国公立大学入試を前提に高3の最後まで5教科をしっかりと勉強させる。
• 「大学入試を目標とした授業は行わない」という強い思いがある。これは東大合格者人数にこだわった過去の進学指導の失敗経験も影響していると思われる。「結果として大学受験にも十分に対応できる授業内容になっている」というのが学校の主張。
• 2004年度から「医学部小論文・面接講座」をスタートさせ、医学部志望の生徒を強力にバックアップしている。

■学校を訪問してみての感想

• 「エリートを育てる」という学校の強い意志を随所に感じる。戦前の海軍兵学校に進学するための最有力予備校という歴史が根強く今にも繋がっているような印象。間違いなく伝統であるが、そのエリート意識が柔軟な学校の成長の足かせになっているような気もしないではない。
• このレベルの学校なので改革に精を出す中堅校と同じ目線で評価するのは適当ではないが、時代の変化への対応が遅い印象はある。電子黒板は全教室に設置されているようだが、「今年の春からICT教育の専門部署を立ち上げた」というのもどうか？
• 独自の価値観を持っており、決して閉鎖的なわけではないが、生徒の権利を尊重するという立場で授業見学などは基本的には行わない。
• 周到に計画された海外研修や各種学習プログラムなど、学びの機会は豊富に用意されている。エリートを育てるための仕掛けであるが、枠組みのゆるい開成・麻布などと比べるとやや息苦しさを感じる。

■名門会担当者より一言

当然のことだが、御三家とも駒場東邦とも早稲田とも違う校風。
強さとプライドを感じる伝統校であるが、一昔前「その気になれば東大に100人合格させることはできる」というリップサービス的な言葉を担当者から聞いたこともある。そんな勢いが少し弱まったようで物足りなさも感じる。
次の時代を牽引する学校になることを期待したい。

（文責）Ａ．Ｍ．