実際に話を聞いて肌で感じた学校情報
第37回 広尾学園小石川中学校・高等学校(現・村田女子高等学校)
名門会の担当者が、実際に学校を訪問してみて、肌で感じた生の情報をご紹介!
第37回目の今回は、広尾学園小石川中学校・高等学校をご紹介します。志望校、併願校を選ぶ際の一つの参考になれば幸いです。
学校名 | 広尾学園小石川中学校・高等学校 (現・村田女子高等学校) |
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所在地 | 東京都文京区本駒込2-29-1 都営地下鉄三田線 / 千石駅より徒歩2分 JR山手線 / 巣鴨駅・駒込駅より徒歩13分 |
ホームページ | https://hiroo-koishikawa.ed.jp/ |
「小石川の地に新たな広尾学園が誕生します。」
2018年4月に村田女子と広尾学園との教育連携が正式発表され、以来教職員の人事交流や合同教員研修など様々な準備を進めてきた学校改革が、いよいよ来年4月に広尾学園小石川という形で実を結ぶことになります。2021年度入試における受験生の動きにも少なからず影響を及ぼしそうな出来事で、いま実施されているオンラインの学校説明会にも、毎回1000人以上の方が参加・視聴されているようです。
残暑厳しい9月中旬、新年度スタートに向けて外装・内装工事が進む村田女子高等学校を訪れ奥田教頭先生にお話を聞きました。改革が進む現在の学園の状況や2021年度入試のこと、また広尾学園小石川としての今後の教育の進め方などについて、お伺いした内容をお伝えしたいと思います。
(校舎完成予想図)
■学校沿革
1909(明治42)年、一ツ橋に学校法人村田学園を設立
1999(平成11)年、校舎を文京区駒込(旧・小石川区篭町)に新築移転
2018(平成30)年、広尾学園と教育連携
2021(令和 3)年、共学化して中学校を開設、広尾学園小石川中学校・高等学校に改称予定
■学校概要
中学校募集定員は120名。本科コース40名とインターナショナルコース80名の2コース制で、クラス編成はインターナショナルコースが2クラス、本科コースが1クラスの40名×3クラス編成。広尾学園で設置されている医進・サイエンスコースは作らない。
インターナショナルコースは、アドバンストグループ(AG=主に帰国子女で構成された入学時からほとんどの授業を英語で行うグループ)とスタンダードグループ(SG=入学してから英語力を伸ばしていくグループ)各40名の募集となる。入学後は各グループ20名ずつ同居する40名クラスが2つ作られる。毎日のHRはクラス単位で行われるが、授業については科目によってグループ分けされ、AGの生徒はすべて英語による授業を受ける。SGの生徒は主要科目(数国理社)について本科クラスの生徒と同じ内容の授業を日本語で受け、実技科目など数科目はAGの生徒と一緒に英語による授業を受けるというプログラムになっている。そのような授業過程の中でSGの生徒たちも少しずつ英語環境に慣れて行き、広尾学園での様子を見ると、1学期が終わるころにはHR等でもAG・SGの違いにほぼ違和感はなくなり、お互いに刺激しあって日々の学園生活を送れるようになるようだ。
ちなみに中学入学生は、高校1年からインターナショナルコースのスタンダードグループ(SG)が無くなってアドバンストグループ(AG)に一本化される。
本科コースは、1~2学年で中学主要科目を終え、3~5学年で高校主要科目を修了。国内の難関大学を目指すコースとなる。特に1~4学年では、読解力・発信力を育成するために、さまざまな活動を通じてプレゼンテーションや論文活動に積極的に取り組む。キャリア教育プログラムは1学年から始まる。
両コースともに教育内容は広尾学園中学校・高等学校のカリキュラムが導入される。まさに新しい広尾学園が小石川に誕生するというイメージである。奥田教頭先生の言葉にあったが、「1~8クラスが広尾、9~11クラスが小石川」という説明がぴったりかもしれない。
その教育内容を推進するために、多くの教職員が広尾学園から、また他の進学校からこの学校に集まってきている。今年から校長に就任された方は昨年までの広尾学園教頭で、十数年前の順心女子から広尾学園への移行の際にはその一つひとつの変革に直接かかわり、その後も広尾学園の発展を先頭に立ってけん引してきた経験をお持ちの方である。その経験の蓄積が小石川の今後に向けて大いに期待を集めている。他にも、各教科の実績のある教員が数多く広尾学園から異動し、また外部からもそれぞれの進学校で指導経験を積んだ何名かの教員が新校の立ち上げに参加している。今回お話を伺った奥田先生も、某進学校での指導経験を活かして、広報的な仕事もこなしながら教頭職として今後小石川で活躍される方である。
小石川は、3年間は高校の募集も行う。募集定員は中学と同じ120名だが、内訳は本科コース80名、インターナショナルコース40名となる。来年度の新中1の生徒が高校に上がるときに高校募集は停止され、完全中高一貫校になる予定である。
■募集要項(中学入試)
◯募集人員
インターナショナルコース・アドバンストグループ(AG) / 40名
インターナショナルコース・スタンダードグループ(SG) / 40名
本科コース / 40名
◯国際生(帰国生)入試
インターナショナルAG、30名募集
本科/インターナショナルSG、若干名募集
第1回 ― 11/3(祝)
第2回 ― 12/14(月)
インターナショナルAGのみの募集・30名(合格見込数60名)
第3回 ― 12/15(火)
本科 & インターナショナルSGの募集・若干名(合格見込数50名)
◯一般入試
本科、40名募集
インターナショナルSG、40名募集
インターナショナルAG、10名募集
※一般入試の合格見込数は合計500名としている
〈 午前入試 〉
第1回 ― 2/1(月)AM
4科のみ / 国語・算数 各50分・各100点、理科・社会 各30分・各50点
本科・15名、インターナショナルSG・15名
〈 午後入試 〉
第2回 ― 2/1(月)PM
2科のみ / 国語・算数 各50分・各100点
本科・10名、インターナショナルSG・10名
第3回 ― 2/2(火)PM
第4回 ― 2/3(水)PM
第5回 ― 2/4(木)PM
2科のみ / 国語・算数 各50分・各100点
各回、本科・5名、インターナショナルSG・5名
〈 インターナショナルAG回 〉
2/4(木)PM
入試科目は国際生入試に準ずる
10名
■中学入試についての情報
入試問題は、広尾学園と同じ形式・難易度になるらしい。合格ラインが広尾と小石川で違ってくるということである。したがって受験生には「広尾学園の過去問をやってください」とのメッセージがあった。一般入試の入試回による難易度の差もつけないとのこと。「第〇〇回入試用の問題という作り方はしない」ということです。したがって、第1回(2/1AM)入試が難易度的に有利ということはなく、むしろ後半に進むにしたがって問題慣れするということがあるかもしれない。ただし、複数回受験による優遇措置というものはない。
しかし合格の可能性を考えれば、学校としては第一志望かそれに近い生徒を歓迎したい思いはあるわけで、募集定員+αの部分は自然に考えれば2/1午前入試に出願してくれた生徒から多めに取ろうとするのではないかと、あくまでも憶測であるが、そんな気はする。
学校側の基本的スタンスとして、「基準に達した受験生は全員合格にして良いのではないか」という考えがある。あとは、規模が大きくはない学校なので定員オーバーになるのも怖く、歩留まりをどう読むかで+αの部分が変わってくることになる。
男女別の定員は作らない。男女の別なく成績順に上位から合格を出していく。「結果として男女半々になることが望ましいが、おそらく女子が少し多めになるのではないか」と予想していた。広尾学園を見ても女子が多くなっていて、男子が多くなることはまずないだろうとのこと。
併願については、説明会アンケートを見ると、やはり広尾学園を考えている家庭が多いとのこと。広尾学園との併願パターンとしては、本科コースを志望する生徒であれば、広尾の本科入試は2/1午前・午後と2/5午前の3回で、2/1は当然広尾を受けるが、もしそこで合格が出なかった場合には、2/2・3・4に小石川に流れてくる可能性は高いと思われる。そこで合格を取って2/5に再度広尾、といった流れだろうか? もちろん他校との併願が絡んでくるのでそう単純には行かないが、2/2・3・4に広尾学園第一志願の生徒が一定数入ってくるとすると難易度もそれなりに上がることになるだろう。そう考えると小石川第一志望の生徒は、やはり2/1で勝負をつけたいところである。ちなみに、四谷大塚の80%予想偏差値では、第1回本科コースが男子48・女子49、第2回(2/1午後)が男子49・女子50となっている。
説明会はこれまではオンラインでの開催のみだったが、11月からは通常の対面形式の実施を考えているようなので、関心のあるご家庭であれば直に学校に行き、話を聞いて判断するのが良いと思う。
■その他
広尾学園との教育提携が発表されてから1~2年は人の出入りもあり、外部からはやや動きが見えづらいところもあったが、ここに来て体制も固まり、方向性がはっきりと見えてきた。大きな改革なので今後も目論見通りに行かないことがそこかしこに出てくるかもしれないが、広尾学園というモデルがあることは大きなアドバンテ-ジになることは間違いない。この点は進学を考える生徒・ご家庭にとっても同様だろう。
広尾とは生徒レベルでの交流も積極的に進める方針で、市川のグラウンドも共同で使用しているようだ。村田女子はサッカー部に定評がある。今後は男子サッカー部もできるはずなので、ぜひ活躍を期待したい。
しばらくは若干の混乱も起こるかもしれないが、大海原に漕ぎ出したからには、いずれは本家を超えるような元気あふれる学校になっていくことを期待したい。
文責:A.M