入試制度改革を過剰に心配するべからず ~大学通信 安田賢治氏との懇談より~
去る5月27日(日)有楽町朝日ホールにて、朝日新聞社メディアビジネス局主催・名門会家庭教師センター特別協賛「中学入試対策セミナー」を開催させていただきました。そのセミナーで講演いただいた大学通信 常務取締役の安田賢治さんと、後日お会いする機会を頂戴しました。本日はその時の談話から、大学入試改革についての興味深いお話しを紹介いたします。
[名門会]入試制度改革の方向性が見えにくく、不安がっているご家庭も少なくありません。
安田さんは、今後どのように、私どもが生徒のご家庭や現場のプロ教師に指針を示していったらよいと思われますか?
[安田氏]アクティブラーニングや主体性評価などの言葉が躍っていますが、要は学生たちに「考えさせたい」のだと思います。ただ、注意しなくてはならないのは、基礎的な学力をしっかり身に付けた上で“プラスアルファが求められるようになる”ということです。
ですから、中には落ちこぼれてしまう子も出てくるのではという懸念はあります。
――基礎学力というのは、従来の学習内容と変わるものなのでしょうか?
いいえ、今までどおりに学習していればよいのです。何が変わるかと言えば、問われ方や表現の仕方が変わるだけなんです。入試制度が変わったからと言って、今までなら東大に合格する生徒が落ちるようになるなんてことはないと思っていい。
――大学入学共通テストについてはどうなるのでしょう?
センター試験との違いは各所で触れられていますが、どうやら平均点を5割に設定するという話もあります。
―― 5割とは厳しいですね
そうです。ですから、基礎学力の定着は本当に重要になってくるんです。
基礎学力も身に付いていないのに、アクティブラーニングだといって、自分の意見を発表しなさいと言われてもね…。
――そうですね
ところで、「社会人基礎力」という言葉をご存知ですか?
――いいえ
そのまま社会人としての基礎的な能力ということなんですが、例えば最近の新入社員は、プレゼンはできるが、コミュニケーションは苦手という方が少なくないそうです。
つまり、プレゼンは教わってできるが、他人の気持ちをくみ取って意思疎通を図ることは教わってできるものではないので苦手なのです。
――なるほど
また、説明文は得意だが、物語文は苦手だという小学生も増えているそうです。
私は、高校生の小論文コンテストの審査員をしたことがあるのですが、縦書きの文章のカッコ(「」)の付け方を間違える子が多いんですよ。縦書きなら右上のカッコから始まり、左下のカッコで終わりますよね。でも、最近の子は横書きばかりに慣れているので、カッコを左上に付けて文章を始めてしまうんです。これには驚きました。
――指導している教師からも、国語力が低下しているとの声は多いです。
本を読んでいる子はそんな間違いはしないはずなんですよね。だから、心配になります。
――ところで、今回の入試制度改革の背景には社会情勢の変化もあると聞きます。AIの発達によって、今後失われるであろう職業もありますよね。そういう点でも、我が子の将来を心配されている保護者の方々も多いようです。
確かにこれからなくなる職業もあるでしょうが、新しく生まれる職業もあるはずです。考えてみてください、携帯電話会社なんて、数十年前に今みたいな状況を想像できましたか?我々が子供の頃なんて、全く考えられもしなかったでしょう。
大切なことは、新しい仕事が生まれたら、それに順応できるような“基礎学力”を身に付けておくことなんです。いたずらに不安がる必要なんて全くありません。
――そのご意見を聞けて安心しました。振り回されたり、右往左往したりせずに、まずはしっかり基礎学力を身に付ければよいのですよね。
そうです。
本日はありがとうございました。
ご紹介した安田さんのお話しは、1時間以上におよぶ懇談の中でのごく一部です。
入試改革について、また教育について、情熱的に色々なことをお話しいただき、たいへん参考になりました。またぜひ機会を設けてお伝えしていきたいと思います。
なお、安田さんに登壇いただいた先日の中学入試セミナーの資料は、名門会の各教室にて無料でお配りしております。また、郵送をご希望の方は、名門会のホームページのお問い合わせフォームから承りますので、ご希望の方は「中学入試セミナー資料希望」と書いてお気軽にお申し込みください。
文責N.N