実際に話を聞いて肌で感じた学校情報 第35回 芝浦工業大学附属中学高等学校
名門会の担当者が、実際に学校を訪問してみて、肌で感じた生の情報をご紹介!
第35回目の今回は、芝浦工業大学附属中学高等学校をご紹介します。志望校、併願校を選ぶ際の一つの参考になれば幸いです。
学校名 | 芝浦工業大学附属中学高等学校 |
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所在地 | 東京都江東区豊洲6-2-7 東京メトロ有楽町線 豊洲駅 6b出口徒歩7分 新交通ゆりかもめ 新豊洲駅 南口徒歩1分 ※通学の際は、原則として豊洲駅を利用するように生徒には告知している。 |
ホームページ | http://www.ijh.shibaura-it.ac.jp/ |
■学校概要
1922(大正11)年、前身となる東京鐡道中学が開校。
1944(昭和19)年、東京育英中学校となる。
1953(昭和28)年、学校法人芝浦学園に経営を移管。
1954(昭和29)年、東京育英高等学校を芝浦工業大学高等学校と校名変更。
1982(昭和57)年、板橋区坂下に移転、中学校を開校し中高6年間一貫教育を開始。
2013(平成25)年、江東区豊洲6丁目への校舎移転を発表。
2017(平成29)年、4月に豊洲に移転。校名を芝浦工業大学附属中学高等学校に変更して、まず高校での共学化がスタート。
2021(令和3)年4月から中学の共学化を予定。
■入試情報
〈 3教科入試について 〉
2017年度入試から、それまでの4教科入試を3教科入試に変更した。
2016年度入試までは、国語・算数各50分・各100点、理科40分・80点、社会30分・60点、合計170分・340点だったのが、2017年度入試からは、国語・算数各60分・各120点、理科50分・100点、合計170分・340点となった。
変更の理由は、国語が苦手な子が多く危惧しているという現場からの声があり、入試問題(国語・理科)に論述の問題を増やすこととなった。その結果、各教科の試験時間を見直すことが必要になったが、全体の試験時間を変更しないという原則から、社会を外すことになったらしい。
ともあれ、いっそう理系色の強い入試になったことは事実である。
◯2019年度中学入試
2/1、2/2、2/4の3回、すべて国語・算数・理科の3教科入試。
・第1回(2/1)、募集人員70名
志願者数344名、受験者数331名、合格者数97名、入学者数75名
・第2回(2/2)、募集人員45名
志願者数410名、受験者数306名、合格者数67名、入学者数45名
・第3回(2/4)、募集人員35名
志願者数430名、受験者数266名、合格者数36名、入学者数27名
※3回とも、志願者数・受験者数は前年度よりもやや減少している。
上記3回の入試と並行して「第一志望者入試」を行っている。
これは、本校第一志望者への優遇を制度化して繰上げ等の選抜方法の不透明さをなくす意図で、2018年度入試より設けた入試制度。
入試前に課題を提出することと、通常入試に複数回同時エントリーが条件。
第3回入試終了後に該当者に電話連絡を入れ、2/6に作文と面接の試験を行う。
募集人員は10名。
2019年度は、10名が受験し9名が合格・入学した。
2019年度は生徒数156名、4クラスでスタート。
◯2020年度中学入試
・第1回:2/1(土)、男子70名
・第2回:2/2(日)、男子45名
・第3回:2/4(火)、男子35名
・第一志望者入試:2/6(木)、男子10名
※日程・募集人員は2019年度入試と変更はないが、国語に作文問題、理科に説明(記述)問題を出題する。第一志望者入試以外は、すべて国算理の3教科入試。
【出題傾向】
〈国語〉
文学的文章、説明的文章、韻文、日本語(語彙・慣用句や表現など)、漢字の大問5題構成。
文学的文章か韻文のどちらかで100字程度の記述問題を出題する。記述問題の配点は約20点。
〈算数〉
基本問題、標準問題、応用問題×2の大問4題構成。
基本問題・標準問題は、合格者のほとんどが満点近い点数を取っている。
基本問題以外は途中式・考え方・図・グラフを書くことが求められ、答えのみでは正解でも△。また、標準問題には定規・コンパスを使用する作図問題が出題される。
〈理科〉
融合問題、物理×2、化学×2、生物、地学、記述問題の8題。
融合問題は、第1回・第2回入試ではひとつのテーマに物化生地を含む形で出題され、第3回入試では、4択の小問が10題という構成になっている。
実験・観察における原理の説明や、図表・グラフなどをもとに自分の考えを正確に述べることができるかなどの記述問題が出題される。
◯2021年度中学入試
女子生徒の募集を開始。
それにともない、新たな教育カリキュラムをスタートさせ、入試要項の変更も予定されている。
〈入試要項(案)〉
〇2/1・2・4の3教科入試はそのままだが、2/1・2入試の国語・算数に「聴解問題」を導入する。
「聴解問題」とは、読み上げられる文章を耳で聞いて内容を理解し問いに答える形式の出題。算数では、説明を聞いて図形を頭に思い描くことなども必要になりそう。
〇2/2午後に、「英語+算数」 or 「言語技術+算数」のいずれかを選択する「特色入試」を新設。
算数・言語技術・英語ともに各30分・100点。「第一志望者入試」は廃止する。
「言語技術」とは、思考を論理的に組み立てて、言葉を用いて他者にわかりやすく伝達する技術としている。例えば「絵を見て、描かれた内容を言葉で他人に伝える」などの内容で、答えが一つに定まらない問いに対して自分の考えを文章で説明する問題。
「英語」は、英検3~5級の幅広いレベルで、リスニングとリーディングを半分ずつの時間と配点で出題される。
〇各回の募集人員の変更
第1回(2/1)、男子70名→男女75名
第2回(2/2)、男子45名→男女40名
第3回(2/4)、男子35名→男女25名
第2回午後、男女15名
帰国子女入試、男子若干名→男女5名
合計160名の募集枠は変わらず、男女別の定員数は設定しない。
【進学実績・附属校推薦】
2019年3月卒業生186名。
理系学部への進学者が132名(70%)で、そのうち51%の生徒が芝浦工業大学に進学している(推薦による進学者は66名)。他の理系学部進学者(65名)は、国公立大学14名、早慶上智3名、東京理科大学8名など。
芝浦工業大学への附属校推薦には、早期推薦・1月推薦・3月推薦の3つの制度がある。早期推薦は高3の1学期までの成績で判定され、合格者は希望する学科への進学と同時に2学期での海外短期留学の権利が得られる。推薦希望の生徒のほとんどは、11月に推薦試験のある1月推薦を利用する。また、一般理系コース、特別理系コースから他大学を一般受験した生徒を対象に再度推薦入試を行う3月推薦制度も用意されている。
中学入学生(中高一貫生)と高校入学生は別カリキュラムで進むためホームルームが一緒になることはないが、高3での選択科目授業やクラブ・委員会などでは一緒に活動する。
高校2年から理系コース、文系コースに分かれる。
【教育の特徴】
「ものづくりマインド」を育て、社会に貢献できるグローバルエンジニアの育成を目指す。
「理系」教育ではなく「理工系」教育と、目指す目標は明確である。
教育プログラムとしての4本の柱
1) 理工系教育(STEAM①)
2) 大学連携教育(STEAM②)
3) 言語教育・グローバル教育
4) 学習支援
2021年度より中学にも女子が入ってくるが、教育理念の基本は変わらない。
その上で、「2021芝浦新カリキュラム」と銘打ち、抜本的な改革を予定している。今行っているSTEAM教育をベースに、G(Global)・I(Information)・D(Design)志向を強化して、必修科目の授業時間数を減らして探求型授業を増やすなど、より理工系研究色の強い内容を検討しているようだ。数学など、授業時間内の定着を考えて先取りは行わないとのこと。今後、新カリキュラム運用の具体化を進める。
中学校共学化について、すでに高校に女子生徒がいることから、女子迎え入れの準備は制服ルールの変更や日々の対応・進路指導など大枠はできているようだが、宿泊行事など詳細については今後煮詰めることになる。
■名門会担当者より一言
中学入学生と高校入学生を明確に分け、中学入学生(中高一貫生)は他大学進学を希望する者も多く、高2からのコース分けでは文系コースも設置される。
ただ、基本は芝浦工業大学との教育連携で、ものづくりの楽しさを実感すべく理工系教育を強く推進する。その質は大変に高いものがあり、他の理系学校の追随を許さないものがある。
教育プログラムの一環として言語教育を推進し、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を鍛え、体系化されたプログラムによる日本語の運用練習や文章力の育成に力を入れる。同時にグローバル教育においては、日本語・英語・コンピューター言語の3つの言葉に強くなることを目標としており、他校にはないユニークな教育を実践している。
とはいえ、「理工系教育」という明確な教育目標があり、入試において「算数が苦手な子は他校を選んだほうがよい」とはっきりと宣言する学校でもある。この学校を志望校の一つとするのであれば、事前に必ず一度は訪れて、校風を体感するべきである。よい学校であることは間違いないが、相性の確認は外せない。
満を持して、2021年度入試から中学においても女子の募集を始める。現高2・高3の在籍女子生徒は20名弱、高1は20名強にとどまり、学校としても雪崩を打つように女子受験生が集まるという状況は想定していないようだが、それでも校内に新たな風が吹き、華やかな雰囲気も見られるようになるのではないか。個性的な生徒が集まりそうな気がする。
文責:A.M