塾対象の学校説明会から情報をピックアップ 第3回 佼成学園女子中学高等学校
例年行われている塾を対象とした学校説明会も、今年は感染症の影響でその多くが中止となってしまっています。このような困難な状況にも関わらず、オンラインで説明会を開催してくれている学校が何校もあります。その中から、受験生にとって役立ちそうな情報を、名門会の担当者が紹介できる範囲でお伝えしていきます。
今回は、6月中旬にライブ配信された説明会から、2020学校改革と銘打って新たなスタートを切っている佼成学園女子の現状についてご紹介したいと思います。
説明会の内容は、学校長による学園の現状についての話に続いて教頭から中高の教育内容の紹介があり、最後に広報担当から2021年度入試についての説明という構成でした。
教育内容紹介の中では卒業生3名と画面を共有しての、ライブ質疑応答コーナーもあり、彼女たちの在学中の様子がよく伝わってくる内容になっていました。
学校名 | 佼成学園女子中学高等学校 |
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所在地 | 東京都世田谷区給田2-1-1 京王線・千歳烏山駅 徒歩6分 |
ホームページ | https://www.girls.kosei.ac.jp/ |
■学校概要
【沿革】
1954(昭和29)年、学校法人交成学園の設立が許可される。翌年1月、女子部を設置。
1960(昭和35)年、学校法人名を交成学園から佼成学園と改める。
1968(昭和43)年、佼成学園女子中学・高等学校校舎落成。
2014(平成26)年、文部科学省よりスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定される。同年9月に創立60周年を迎えた。
2020(令和2)年、中間試験廃止等、新たな学校改革をスタート。
■説明会よりピックアップ
【佼成女子の教育】
英語教育とグローバル教育に特に力を入れている。
【中学の教育内容】
英語関連の授業が週の授業時間の3分の1を占めるカリキュラムとなっており、その中では教科書を進める授業以外に英検に特化した授業やネイティブによる英会話授業、同じくネイティブによる音楽・美術のイマ―ジョン授業などが行われている。少人数に分かれたクラスできめ細かく指導がなされ、生徒たちにとっては入学時の英語力の有無にかかわらず着実に力をつけられる環境が用意されている。その成果を試す場にもなるのが中学3年の1月に訪れるニュージーランド修学旅行(1週間のホームステイ)である。希望者はそのまま現地にとどまり、2ケ月間の中期留学としてニュージーランド滞在を続けることもできるシステムとなっている。この海外経験を通して初めて異文化に触れ、驚きと同時に興味を触発され、世界に向けて視野を広げるきっかけとなる生徒も多いようだ。
英検は、中学3年生の97%の生徒が3級以上を、さらに72%の生徒は準2級以上を取得という高水準である。
高校進学に向けては、コースごとに用意された体験プログラムを通して各自進路を決定していく。
【高校の教育内容】
国際コース(留学クラスとスーパーグローバルクラス)・特進コース・進学コースの3コース・4クラス編成となっており、それぞれの特性に沿った学びを進める。
もっとも特徴のあるのが国際コースの2クラスである。
留学クラスは、高校入学後8カ月間の準備期間を経て、年明けの1月から1年間のニュージーランドでのホームステイに向かう。期間中、高校から数回の様子確認はあるようだが、基本現地での生活は各自の判断で進めることとなる。ライブインタビューに出てくれた生徒は生まれてはじめてラグビーに触れ、競技を楽しむ中でマオリ族の伝統的な踊りであるハカにも挑戦したりして、数々の貴重な経験を積んだようだ。留学の1年間を通して英語力の向上と国際的視野が育成され、帰国後はそれぞれの希望進路実現に向けて次なる歩みを進めることとなる。
スーパーグローバルクラスは、高校1年次はイスラム教のモスク訪問や栃木での海外実習生と共に行う農作業などを通して異文化理解と国際感覚を磨き、高2の夏に2週間タイでフィールドワークを行う。現地のスラム街などにも足を向け、そこで経済格差や教育格差を目の当たりにして価値観を揺さぶられる生徒が多いようだが、その他現地でのさまざまな経験をもとに帰国後は各自のテーマで論文作成に取り組む。そして高3の春・4月にはイギリスにわたり、現地での2週間の語学研修の後、ロンドン大学SOAS校で英語による論文指導と特別講義を受ける。計6週間のイギリス研修旅行である。帰国後は夏までかけて英語論文を完成させ、秋の研究発表会に臨む。並行して大学受験の準備を行うことになるが、必然的に彼女たちは大学卒業後の社会に出てからの活動を考え、国内のみならず広く海外での仕事をイメージする生徒が多くなる。大学選びもそこからの逆算で選択していくケースが多いようだ。
特進コースは、5教科7科目をしっかりと学び、国公立大学や難関私立大学を目指す内容となっている。放課後講習も行われているが、近年導入された佼成学園男子校とコラボで、それぞれから男女各15名ずつ選抜されて行われるトップレベル講習が生徒たちの学力アップに大きく貢献しているようだ。今春は、お茶の水女子大学や東京学芸大学など国公立大学に23名の合格者を出している。
進学コースは、スポーツ&カルチャーを合言葉に、部活動や習い事にも積極的に打ち込めるコースとして設けられている。ハンドボール部、バスケットボール部、吹奏楽部は強化指定部になっている。大学へは指定校推薦資格をとって進学する生徒も多い。
どのコースに進むかによって異なった環境に身を置くことにはなるが、それぞれの違いを認識し、またお互いが日々刺激しあうことによって、将来の礎となる手ごたえのある3年間を各自が送っているように見える。
【2020学校改革】
〇中間試験を廃止して新たな評価システムを導入する。
評価方法は、従来的学力観(期末試験+小テスト)による評価を60%、新しい学力観(発表・協働学習・表現活動+教員裁量)による評価を40%とする。
〇中学はチーム担任制として3人の担任が2クラス全員を見守る体制を作り、教員が協働の手本となる。
〇探求学習(ゼミナール)を新たに始動させて、外部企業(富士通など)とのコラボレーションを図る。
〇高大連携の取り組み。
上智大学との特別連携では、入学前単位認定や研究の継続などを進めるが、一方で宗教を超えた連携としても注目される。
また、この春に成城大学とも協定が締結され、こちらは地理的な近さを活かして学びの共有などを考えている。
〇部活動の新たな形としてNPO法人に指導を委託する運営を試みる。
地域との連携を考慮した取り組みの中で、すでにサッカー部が活動を始めている。
【2021年度中学入試】
入試日程は、2/1から2/5まで毎日の午前・午後入試と2/7の午前入試を予定している。
2科・4科選択入試は2/1と2/2の午前、2科入試は2/3午前・2/4午後・2/5午前に予定。スーパー特待入試(2科)は毎日午前or午後のいずれかに入れられている。
加えて、適性検査型入試、英語入試、グローバル入試と、日程は別になるが帰国生入試も予定されており、多様な入試形態となっている。
詳細は、募集要項が発表されたら確認をしてください。
■その他
2022年度には千歳烏山駅の高架化が予定されているようで、完成すると駅から徒歩3分という便利さになるようだ。地域が活性化する中で、学園も新たな動きを始めている。
入学偏差値はお世辞にも高いとは言えないが、一度先入観を捨ててこの学校の教育内容を見てみることをお勧めする。中学3年間で培われる英語力が半端ではないことは高校における英検合格データなどでも実証されており、その力をベースとした国内・海外での活動を通して、これからの近未来に活躍するためのさまざまな体験が蓄積されている。“自分の将来を自分で見つけていくことができる”そんな当たり前な成長が期待できる学校である。
あえて物申せば、校舎の外観が、もう少し女子校っぽく華やかであればよいのにと感じた。いきなり校舎の建て替えは難しいであろうから、外壁の色を変えるなど、一目女子があこがれるような演出が欲しい。
ちなみに、学園に宗教色はない。男子校も同様だが、金は出すが口は出さないという経営母体である。
大学合格実績の伸びに連れて徐々に力のある生徒が入学してくるようにはなっているものの、まだまだ受験生へのアピールが弱いように感じる。“21世紀型教育”というフレーズは果たして機能しているのだろうか。この言葉にひかれて入学を決める生徒がどれだけいるのだろうか、逆にうさん臭さを感じて敬遠する生徒の方が多いのではないだろうか…と危惧する。親はその学校の教育内容をよく見ている。実際の教育現場の様子をもっとストレートに伝えた方が余程アピール効果は高いように思ったのだが、いかがだろうか。
2020年度の大学合格実績は、国公立23名、早慶上理35名、GMARCH 47名という結果だ。中学入学偏差値38(首都圏模試)の学校ではないことは確かである。
文責:A.M